そんな中

実家に帰った。
ちょうど家族はみんな出かけていて、居なかった。
一人で居ると、カナダにいる妹から電話があった。
妹は俺が電話に出ると、「帰ってたんや」などと他愛もない会話をした。
そして、母親は居るかと聞いてきたので、まだ帰ってきてないと言った。
その答えにひどく妹は落ち込んでいた。
何で落ち込んでいるのか思っていたら、ホントに居ないのかと聞かれた。
居ないと言おうと思ったら言葉に詰まった、妹の言葉が震えていたからだ。
恐らく電話の向こうで妹は泣いていたのだろう。
20年近く妹を見てきたが、妹が泣いてる姿をほとんど見たことがなかった。
そんな妹が泣いているのだから余程のことがあったのだろう。

何も言えなかった…
それどころか、妹が泣いてる事に気付かない振りまでもして。
そしてそのまま電話を切った。
電話を切った後、思った。

なんて俺は情けない人間なんだ、電話の向こうに苦しんでいる妹がいるのに、何もしてやれない
自分自身がすごく嫌になった。

両親が帰ってきて、妹から電話があったと伝えた。
しかし、泣いていた事は言えなかった。